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カンボジア① ラッフルズホテルでのリサイタル

10月に入り、ようやく本格的な秋の風が感じられるようになってきましたね。後期の大学勤務も始まって、このシーズンの例年のペースに慣れてきたところです。

今年前半までの忙しさから、頭の中も徐々に整理できてきて、カンボジアのことを綴れる気持ちと時間が取れるようになりました。


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今春のカンボジア滞在のメインイベントは、なんといってもリサイタルでした。

2020年、予定されていたイブラ財団のアジアツアーの中にカンボジア公演も組み込まれていたのですが、コロナで中止となってしまいました。有り難いことに、その時と同じ現地主催団体からの招聘により今回のリサイタルが実現しました。


会場は5つ星のラッフルズホテルで完全な別世界。本番前の数日だけ泊まらせていただきましたが、館内はアロマが焚かれ、カンボジアとは思えないほど静かで、五感が喜ぶ大切さを実感しました。

私は本番前だったため思い切り羽を伸ばすことはできませんでしが、バカンスで滞在するには最高の場所でした。プノンペンに旅行される時にはぜひお泊まりになられることをお勧めします!


ピアニストは現地在住の坂野一生さん。本業はカンボジア司法省でアドバイザーをされているスーパーエリートで、先日外務大臣表彰を受賞された素晴らしい方です。坂野さんは現地生活が長いので、お会いする時にはいつもカンボジア話が尽きず質問攻めにしてしまいます笑


リサイタル当日は、クメール正月の週末で復活祭の日でもあるという集客が難しいタイミングでしたが、音楽を愛するお客様に囲まれ、ピアニシモでは水を打ったように静かになり、カルメンでは驚きの声が上がるなど、その場にいる全員で音楽を作り上げたような素晴らしい時間でした。

今回初めて吹いたフリューリンクのファンタジーは本当に美しい音楽で、プーランクも人前で吹くのは初めてでしたので、同じプログラムを日本でも再演できたら…と願っています。


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色々なところで演奏をさせていただく毎に、演奏会は表に見えない様々な方々で成り立っていることを実感します。今回も、会場にピアノを搬入して組み立てる人たちから始まり、調律師、ホテルスタッフ、ディレクターなどなど、多くの人たちの専門的な力が不可欠でした。


そうした音楽を奏でるための環境のことでいうと、日本のようにコンサートホールがほとんどなく、生のクラシック音楽を聴く環境に乏しい場所で体験する音楽というのは、それ自体価値としても貴重ですが、何を音楽の本質として受け止めるかも変わってくるのだろうなと感じました。


カンボジアではこれまで学校の中での演奏がほとんどでしたが、このような誰でも聴けるオープンな場所での演奏の機会も増えていったらいいなと思います。


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