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県大講義終了

  • 6 日前
  • 読了時間: 5分

静岡県大「舞台芸術」前期15回講義+試験、採点、レポート返却…一年目の業務全てがようやく終わり、準備期間を含めるとおよそ一年弱、忙しく充実した日々を送らせていただきました。


この講義を担当することが決まったときから、シラバスを練りに練って、ここでしか受けることのできない「舞台芸術」講義が提供できるような設計を考えました。

いわゆる狭義の舞台芸術だけではなく、身体表現とそれを取り巻く関係性に光を当てること、地域学として民俗芸能も取り上げること、比較文化の視点を多く取り入れて分野横断的な学びができること、各学部の専門分野とも関連づけること、知識と感覚のインプットのバランス、生演奏を毎回入れること、できるだけインタラクティブな授業にすること…などなど。


おおむね上手くいったかな、と感じられたのは、私の能力ではなく、学生たちの受け取る力のおかげです。優れた学び手というのは、教員が伝えたいこと以上のことを学び取ってくれるものなのだな、ということを実感しました。


毎講義後のコメントペーパーと最終レポートは手書きで書いてもらうようにして、その場で手を動かして表現するという舞台芸術的機会を創出するようにしましたが、読んでいてぐっとくるようなものも多く、手書きならではの温かみや人となりもよく表れていて。書いてもらった全ての文章がとても愛おしく感じられました。


県大のキャンパスは、丘の上にあって風の通りが良く、どの窓からでも緑が見え、煉瓦造りの建物はクラシックで美しく、行くたびに五感を解放してくれる感覚があります。学生の知性と感性のバランスの良さは、個の資質や教授陣の素晴らしさに加えて、環境が与えてくれる部分も大きいのでは、と思うほど素敵なキャンパスです。

この恵まれた環境を生かして、外の世界の音を聴くサウンドスケープのワークも取り入れました。これがまた本当によかった!どんな音が聞こえて、何に気づけたか、その答えも目から鱗でした。


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芸術や芸能は、それが芸術・芸能として外に現れる姿というのは、様式や型が定まった「結果」としての姿なのですよね。完成されるまでに長い長いプロセスの時間がある。そこには、個人の試行錯誤や共同体の日々の積み重ねの歴史があり、芸術・芸能が生まれるこの過程にこそ、人間の営みが凝縮されていると私は考えています。


そのためこの講義でも、芸術・芸能を静的で博物館的な過去の遺物と捉えるのではなく、動的で生きた営みとする生成プロセスの部分に焦点を当てる設計をしていました。


完成されたものを受け取るばかりの現代の消費社会で、また、舞台芸術を専門的に学ぶ者たちではない学び手にとって、表に現れることのない過程の部分にどこまで想像を及ばすことができるのだろうか、という点は講義の最大の懸念でしたが、それもこちらの杞憂でした。


それは彼らの高い知性と感性によるところが大きいですが、もう一つ挙げるとすると、ものづくりの県といわれる静岡に暮らしているところも大きいのではないかと考えています。

生産から加工、流通までの工程を見ることができる環境が身近にあるような、作り手の顔が見えることの多い生活をしていることが、何かを作る過程への想像力を高めてくれるのでは、と。


現在のアートシーンでは、消費社会におけるアートやアートマーケットに対するオルタナティヴを、非西欧諸国の文化やアート実践に求める動きも現れています。ですが、海外にまで行かなくても、地方には豊穣な民俗芸能が存在します。それは、毎年繰り返されるものながら、毎年作り直されるものでもあり、共同体の歴史を語り継いでいく生きた伝統です。


そのような、過程が見える文化と地続きの生活ができることは、学問への力を育んでくれるものと思います。なぜなら学問の要とは、過程を見ることのできる力だと考えるからです。

地方で学ぶ意義とは、このようなところにあるのではないかと、学生たちの姿から教えてもらいました。


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約80名の受講生に向き合う毎週の講義は、ちょっとしたサロンコンサートを毎週行っているようなもので、毎週の準備に本当に必死でした。そのため、講義を終えたらきっとほっとするのだろうな、と思っていたのが、意外なことにとても淋しい感情が込みあがりました。


今までの大学の授業は実技レッスンが主で、2年間または4年間じっくり学生と向き合い、卒業しても付き合いは続く関係性でした。ですが、この学生たちとは講義が終わったらもう会うこともないかもしれないと思うと、なんともいえない悲しみが去来しました。

書いてくれたコメントやレポートを読みながら、少しの間感傷に浸りたいと思います。


講義にはまた、5名の社会人聴講生も受講してくださいました。御年80を超える方々が、毎週坂道を登って来校され、熱心に聴講してくださったことは、本当に大きな励みになりました。

その学びの姿勢には学生たちも大きな刺激になったようで、グループワークなどで社会人の方々のお話を聞けてよかったとの感想も挙がりました。


この講義は来年度も担当予定ですので、ご関心のある方は3月頃に告知予定の社会人聴講生募集要項よりお申し込みいただけましたら幸いです。




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