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学びの夏

今年の夏はとりわけ暑いな…と毎年言っている気がしますが、それでも今年は格段に暑い夏でしたね。9月になってもまだまだ猛暑が続きましたが、私の住むあたりは昨日今日とやっとひと段落したような、秋をほのかに感じる風が吹いています。

しかしここまで暑いと頭も働かず、日本人もカンボジア人と同じような働き方でいいのではないかと思ってしまいます。ようやく少し涼しくなったこのタイミングで、夏を振り返ってみたいと思います。


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8月はコンクール審査、教え子たちとのミーティングやゼミ、ホームレッスン、クローズドのおさらい会など、若い世代と接することが多かった月で、自分が受け取ったものを次の世代へどのように伝えていくか、ということを考える時間でもありました。


伝統の継承の際に言われるのが、継承には「トラディション」(tradioton=伝統)と「トランジション」(transition=変遷)が共存していることが必要である、ということ。

変遷が伴わない継承には命が宿らずやがて形骸化してしまうのだ、ということと理解していますが、音楽の場合にもこのことが当てはまるなと常日頃思っています。


過去から未来へとそのまま伝えていくことが必要な普遍的なものと、時代や科学技術の発展に応じてアップデートしていかなければならないものを見定めて、必要な勉強を重ねていくことが大切だなと感じているところで、その意味では8月は、音楽と演奏における伝統と変遷の両方を学ぶ・知る時間となりました。


伝統の意味では、フランス時代の恩師、フランス国立管弦楽団のミッシェル・モラゲス先生との再会と、彼のレッスンをたくさん聴かせていただいたこと。

モラゲス先生とはもう20年以上前、日本でのマスタークラスを聴きに行ったのが最初の出会いでした。そのレッスンと演奏に衝撃を受け、半ば引き寄せられるかのように、お金を貯めてはパリまで習いに行っていました。

フランス音楽ってこんなに美しいものだったんだということも彼の演奏が教えてくれて。もっとこの人から音楽を教わりたいという思いが留学を決めた大きなきっかけでした。


久しぶりに聴いたレッスンは、生徒の本質を見抜く早さやその後の導く方向性の素晴らしさ、アナリーゼの見事さや、思わず微笑んでしまうユーモアに溢れた愛情表現は変わらず、器の大きさや包容力はよりパワーアップしてました。

音楽の真髄に触れられ、彼の人間性に感化される喜びとに満ちた、こういうレッスンができるように精進したいと思わせる素晴らしい時間でした。


そして変遷の意味では、骨理学のトレーナーの資格を取るための勉強。簡単に内容を説明すると、これまでのような画一的なメソッドではなく、個人の身体特性に合わせた体の使い方を知り実践していくことで、技術的な問題を解消し、その人本来の自然な演奏表現が生まれる、という身体論です。


管楽器は息を使って身体の内側から出力するため、そのプロセスが目に見えないこと、更にフルートは左右非対称で腕を上げっぱなしにする楽器のため、体の軸やバランスを取ることが難しいことから、奏法に不安を抱えていない人はいないのではないかというくらい、無理なく楽に吹けるようになるのが非常に難しい楽器です。


私が学生の頃には、というか今も一部の範囲以外には、演奏における身体科学のメソッドは確立も浸透もしておらず、先生の経験からなる経験論的・画一的な体の使い方を、(もちろん先生からしたら良かれと思ってのことですが)教え込まれていました。それが原因で体を痛めてしまったり、無理して吹いて演奏の喜びを感じられなくなってしまったりと、自分も周りの学生たちも、本当に苦労をしていました。


その後、自分に合った奏法を見つけ、人それぞれに体の自然な使い方が違うことをわかってからは、経験論的なアドバイスは全く生徒たちのためにはならないのなら、大変そうに吹いている子たちに何をどう教えたらいいのか?という悩みが出てきました。

そして色々な身体メソッドを試したのち、骨理学が奏法に最も有効にアプローチできると考えて、その資格を取るために勉強している、というところです。


今はまだ入り口に立ったばかりで、この理論の複雑さや奥深さに、私に資格が取れるのか不安ではありますが、自分の演奏のためにも、そして少しでも悩みを抱える人たちが救われるように、先は長いですが日々勉強に励んでいます。


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さて、このような学びの8月でしたが、9月に入り、これからの本番や仕事が一気に動き始まりました。次の投稿でこの先のスケジュールを、決まっているもののみお知らせいたします。みなさまとどこかでお目にかかれますことを願っております。


地域によっては寒かったり、また天災に遭われたり、さらには悲しい事件が起きたり、世の中の動向も落ち着かなかったり…どなたさまもお健やかにお過ごしになられますように。








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